ディクテーションとの出会った時、僕は切羽詰まっていました。
仕事で米国西海岸のベンダー内に日本の販売会社のマネージャーとして常駐することになりました。現地のエンジニアと共に重大なプロジェクトを完成させる必要があり技術リーダーの僕ひとりで行くことのなったのです。
しかし当時の僕の英語は日常生活でなんとかなる程度。しかもブロークン。発音も当然自己流でrとl、thなどはかなり気をつけていないと相手に伝わらないしろものでした。
販社のメーカー駐在となると先方のマネージャーやディレクターとも対等にプロジェクト推進や成果物の正常性について毎日意見を交わし議論する必要があります。期間内にきちんとプロジェクトを成功させるためにはこちら側の意向で彼らをコントロールする場面も多々あります。無論すべて英語です。
相手に一目おかれることはあれ、絶対になめられてはいけない立場です。多少間違ったことでも言葉で相手を言い負かすというお国柄。米国では、大げさに言えば辣腕弁護士は犯罪も無罪になるというイメージでいました。つまり英会話といってもコミュニケーションで丸め込まれてはいけないという恐れと気構えがありました。
渡米まで2か月。そんなこんなで当時の僕は切羽詰まっていたのです。
Kei